風雪よよよ旅

大衆演劇 旅芝居 寄席的なものの旅

『釣り忍』 忍び泣くおはん

旅芝居の、定番のお外題の1つ『釣り忍』(山本周五郎原作)

おはんと定次郎という、ちょっとワケあり?夫婦の物語。

先日、立て続けに2回当たり、、

2回めの劇団さんの『釣り忍』に、さめざめと泣きました。


ベテラン座長の女形の、ねっちりとした口跡。

定次郎よりちょっと、いや、だいぶ年上。

ややオーバーめなアクションで、ニコニコ(グフフかな?)と笑う。

底抜けの明るさは、苦労を通した人だけが持てる明るさで・・・

テンション高めで、ちょっと濃ゆいキャラ なんだけど

観ているうちに、だんだん可愛らしく見えてくる。

懐深く、情厚い「おはん」。

 

その笑みを、曇らせる「使者」(定次郎の義弟)がやってくる・・・

 

この後の展開では、

客席の、年配の女性はみんな泣いていたと思う。

好いた男と、その義弟のために、離縁を決める。

「わたしなら、大丈夫」

おどけて、笑って、強がって。

定次郎を送り出したあと、しばらくおどけていて・・・

だんだん、顔がひにっと歪む。

膝を落として、座り込み、

肩を思い切り上下させ、ひぃひぃと、泣く。

両手はだらりと落としたまま。

誰もいなくなったところで、悲しみを放出させる・・・

 

あったかで、情にもろく、、いや、それだけじゃないな。

もう若くなく、外見も衰えてゆく

「こんな私なんて」と諦め、こっそり泣いている

そんな女たちを代弁するような「おはん」だったから

劇場にいた女性たちも、わたしも、泣いたのだと思う。

 

この座長さんが人気があるの、わかるなあ。。

わたしみたいな情のない女でも、胸が詰まって仕方なかった。

そもそも「釣り忍」とは、とか頭から飛んで、

そないに泣かんでもと言うくらい、アホみたいに泣いていました。

 

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生きていく中で、増えてゆく心の傷。

でも、笑おう。皆のため、自分のために。

 

 

 

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