風雪よよよ旅

大衆演劇 旅芝居 寄席的なものの旅

鑑賞メモ:藤山寛美十八番箱「笑艶 桂春団治」

DVD「藤山寛美十八番箱」が市の図書館の蔵書にあり、ちょっとずつ借りて観ています。その中でも「笑艶 桂春団治」は3部作と長い作品なので、なかなか手が出せずにいましたが、先日やっと借りまして、他の用もあるのに一気に観てしまいました。

f:id:yoyoyosare:20191230104816j:plain

藤山寛美十八番箱DVD「笑艶 桂春団治(第三部)」カバー写真


長編ということもありますが「十八番箱」の中の作品の中でも、これだけちょっと異質?特別なものに感じました。

伝説の人物の生涯を戯曲化。
藤山寛美さんお得意の、絶妙なタイミングで繰り出される軽口にも、どことなく重みがあるような。演じるにあたり、一時代を築いた噺家に対する敬意の限りが尽くされているような気がしました。

 

第三部は、鬼気迫るような空気が。画質のあまり良くない映像からでも感じるのですから、実際舞台で観たらいかばかりか。幕切れまでの5分間は背中がぞっとするほどで、花道を人力に乗って去る春団治藤山寛美)は、鳥屋からそのまま冥土に行ってしまったのではないか…と思えてなりませんでした。

「芸のぉ〜ためなぁらぁ、女房も泣かすぅ〜♪」という歌の通り、話芸はすごくても、人としてどやねんな春団治を、周囲の女性たちは「師匠、師匠」と崇め、全てを許して尽くします。「芸人ちゅうのはこういうもんや」と言われたら、それまでなのですが、第2部あたりの暴君ぶりは、観ていてドン引き…が、第3部では一転、苦労を乗り越え強くなった女性たちが、春団治を参らせる。演じる女優陣も、藤山寛美先生を圧倒する力強さで、客席からも手(拍手)が来ます。
舞台セットも家の作りが2段(2階)に組まれて、あちこちから出入りできるようになっていて(演出上でキモの部分)面白かったです。

欲を言えば、これだけ長い時間を使っての上演なのだから、ちらっとでもいいので高座の場面を入れてほしかったかな。

俥夫の力さんに泣かされました。

 

 

©2020 yoyoyosare.