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ライブ配信舞踊の夢うつつ・午前2時の「恋し」〜17Live「恋川純弥のザ・フィクション」2020.9.10


2020年9月10日の夜。
途切れ途切れながら、恋川純弥さんの17Live配信を観ていた。

17Live 「恋川純弥のザ・フィクション」


いつも熱の入った内容なのだけど、
この日はまた仕込みが念入りで、何か仕掛けてきた感じがあった。

舞踊が「田原坂」づくしだったと思う。
もしかしたら違う曲だったかもしれない。
同じ歌の違うバージョン・パターンを次々踊るというもので
あんなにかっこいい!と思って見ていたのに、
起きたら忘れる夢みたいに、記憶があやふやになってしまった。

ただ、パソコンの画面を見ながら「今日は神回かも」と思ったことと、最後の舞踊が圧巻だったことは思い出せる。

 

それは夜2時くらいだったか、
ある方からの「刀舞踊が見たい」というリクエストに答えてのことだった。

予定では最後の舞踊が終わって「今日はもう眠いです」と言っていた純弥さん、
突然スイッチが入ったのか、曲を探し出し、刀を持って位置について踊り始めた。

抜いた刀がスラリと長く、重そうで、それほど鮮明でないパソコンの画面で見てもキラキラ光って、かなりの名品と思われた。

気がググッと篭められた、力強く美しい舞踊。
眠くてぼーっとしながらの鑑賞だったけど、純弥さんの集中がビンビン伝わってきて、すごいことが始まった…と思った。


純弥さんは、途中から扇を出し、くるくる操り始めた。
「あれ、扇を出したら刀舞踊じゃないんじゃ・・・」と、ツッコミたくなったその時だ。
純弥さんは扇をふわっと投げて、はらはらと落ちてくるところを刀で貫いたのだ。
まるで蝶を仕留めるみたいに。

扇を刺したまま、カメラに近づいてきた純弥さん。
よく見れば扇は破れていない。刀は中骨の隙間を貫いていたのだった。

音楽の終わりとともに、刀を鞘に収めて、終了。

唸るしかなかった。


舞踊と同様に大事なのが「カメラワーク」。
カメラが固定だから、舞い手の方が奥へ引っ込んだり、要所要所で近づいたりする。セルフカメラワークとでも言えばいいだろうか。それが完璧なのだ。

純弥さんが17Live配信を始めて確か5ヶ月。毎日配信される中で、どうすれば思った通りに映るかを知り尽くしていて、あらゆるキメ顔やポージングをフレーム内に見事にジャストフィットさせる。
計算された歌番組を見ているようだった。



この、夜2時過ぎに突如始まった舞踊を見ながら、ネット配信パフォーマンスの1つの到達点を見た思いがした。

舞台でもなく、テレビでもなく、ネットを介して繋がる、スマホサイズのフレームの新しいライブ空間。

画面に滝のように流れていたコメントやギフトが途中から途絶え気味になったのは、みんなこの舞踊をしっかり見届けたいと思ったからなのではと、想像した。
コメントやギフトが止まるとライバー側は困るのだけど、双方が、今この時に没頭していた。目が覚めたら終わっていた。本当に夢の中の出来事のようなひとときだった。

 

純弥さんは「即興で踊った」と言っていた。
踊り終えた後、クールな純弥さんには珍しく、満足そうな表情を滲ませていた。

曲は吉田兄弟の「恋し」とのことだった。

 

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恋川純弥さん 2019.6@庄内天満座での三味線演奏と舞踊

 

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