風雪よよよ旅

大衆演劇 旅芝居 寄席的なものの旅

2020年振り返り・大衆演劇舞踊書付5つ


 この1年は色々な意味で特別な1年。数えきれないですが、ひとまず・・・
めくるめく甘美な世界と妄想の扉をありがとうございます 

 

市川とと丸頑張るデイ(市川ひと丸劇団)7月25日@梅南座

15歳市川とと丸さんの、今出来ること全て出し尽くしてのおもてなしの舞台。
舞踊で女形は初めて言っておられたと思います、その初々しさにノックアウト。

 

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市川とと丸 2020.8.25@梅南座


幾分ぎこちない。でもそれも含めて全て今しか出せないみずみずしい輝きになっている。欠点じゃないんです。

大衆演劇の魅力の1つは、このような若い人たちが等身大で頑張っている姿が見られるところにあると思うこの頃。いわゆる大舞台ではベテランが席巻しているので・・・

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2020.8.25 市川ひと丸劇団@梅南座

舞台の上も客席側も、この日の若き主役の挑戦を全力で盛り上げる。

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2020.8.25@梅南座

演者と一緒にドキドキして「メッチャがんばれーっ」と叫ぶ、劇場の熱気にも酔いしれたー。

 

 

つばさ準之助祭り(劇団つばさ)9月7日@此花演劇館

劇団寿ゲスト出演での「準之助祭り」。
ミニショートップの「ON THE ROAD」から悲鳴が上がる。

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つばさ準之助座長(劇団つばさ)2020.9.7@此花演劇館


ある劇場で、ペンライトをノリノリに振りながら応援する常連さんがおられて、その方曰く「一番振りやすいのはつばさ準之助さん」で、「踊りの振りと曲の流れがぴったり一致してるんですよ」とおっしゃる。
それがどういうことなのか、正確には理解できてないのですが^^;、おぼろげにはわかるような、、、

この日、古典ものからふりふりドレスの女形まで、振り幅自在の舞踊の中で、1番声にならない悲鳴が出たのは、薄いレース地の着物での妖艶な「Despacito」。

わたしのような色気のかけらもない人間でも、性的本能を引っ張り出される。決して直接的な表現ではなく、悦びに揺れる炎のような・・・見ながら耳たぶまで熱ってしまいました。激ヤバです。

 

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つばさ準之助座長(劇団つばさ)2020.9.7@此花演劇館

 

宝海大空座長(宝海劇団)「My Heart Will Go On 」11月1日@浪速クラブ

大衆演劇の舞踊は、歌詞の当てぶりでその歌の情景を表現されることが多い。

宝海大空座長の舞踊は、当てぶりはあまり用いず、その歌の内的世界やイメージを表現している…そんな風に思います。

ショーの中盤、板付の登場で、かかる曲は「My Heart Will Go On 」、
言わずと知れた映画「タイタニック」のメインテーマで、豪華客船の中で芽生えた若い男女の恋を歌った往年の大ヒット曲。

大空さんが表現するのは、その主人公のジャックとローズではなく、ローズが持っていた幻の宝石「碧洋のハート」ではないか…と思いました。

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宝海大空座長 2020.11.1@浪速クラブ

宝石は語らない。どんな運命に会おうとも、どこまでも美しく輝くだけ・・・

映画が大好きと言っておられたので、いつか「宝海大空・名画を舞う」とか、やって欲しいなあ。。

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宝海大空座長 2020.11.1@浪速クラブ

 

 

天龍地そらさん「越後獅子の唄」12月10日@道頓堀ZAZA

そらさんの十八番舞踊と教えてもらい、駆けつけました。

森川竜馬劇団道頓堀ZAZA公演での「そら祭り」の1本は、まるで昔話の絵本から抜け出てきたような風情。

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天龍地そら・桜美照乃 2020.12.10@道頓堀ZAZA

曲自体が寂しげで哀愁漂うのですが、そらさんが醸し出すムードはどこか朗らかで、湿っぽくならない。寒いけれど晴れわたる空、みたいな・・・

アクロバティックな技もたっぷり。

相方の桜美照乃さんも、こんなに可憐なのに大技を難なくこなし、終わりと当時に「アンコール!」と叫んでしまった(心の中で)舞踊でした。

 

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天龍地そら・桜美照乃 2020.12.10@道頓堀ZAZA


  

咲之阿国さん(劇団あやめ)「女田原坂」@12月18日尼崎遊楽館

舞踊の名手は、この12月、気合がみなぎっているのを感じました。

曲紹介の時に「女田原坂」とコールされましたが、かかる曲は「田原坂」です。

阿国さんは隊士の扮装でも、きりりとした袴でもなく、どこまでもエレガントに白い着物をまとい、扇子1本で、田原坂の合戦を表します。

それは田原坂の合戦を俯瞰する天女?
隊士たちに寄り添い鼓舞する戦の女神?
物語を後世に伝える美しき語り部

時に隊士とともにたたかい、時に高みから見おろし、戦の行方を憂う・・・幾重にもイメージが交錯して、舞踊は"自決"で終わります。こうするしかない、というように。真正面を見据え、毅然と。

 

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