「喧嘩屋五郎兵衛」のあざ〜劇団春駒@梅南座 観劇記
「喧嘩屋五郎兵衛」は、大衆演劇の定番のお芝居の1つ。
顔半分に大きなやけどのあと(あざ)がある喧嘩屋一家の親分・五郎兵衛に、大店の令嬢との縁談話が舞い込む。半信半疑の五郎兵衛も、仲人の八百屋が「お嬢さんは親分の心に惚れたのだ」と言うものだから、すっかりその気に。
ところが、令嬢が惚れたのは親分ではなく喧嘩屋一家の伊之助という若い衆だった。天国から地獄へ突き落とされた五郎兵衛。怒りが伊之助に向かう。五郎兵衛を慈しむ兄の朝比奈藤兵衛の説得も虚しく、刃渡り勝負に。悲劇が起こる・・・
起承転結がはっきりしてわかりやすく、見せ場もたくさんあり、多くの劇団が演じている。行くと当たる確率が高い^^;それくらい頻回にかけられているお芝居で、親しまれている。
さて、五郎兵衛の顔のあざは、右側にあるか左側か。
五郎兵衛の最初の登場で決まるのではという仮説を立ててみた。
舞台上手から登場するときは、右側
舞台下手から登場するときは、左側。
どちらも、初登場時にはアザのないきれいな横顔が客席に向くことになる。
わたしが観た感じでは、右側が多い気がする。
先月、梅南座で観た劇団春駒の「喧嘩屋五郎兵衛」でも、五郎兵衛のあざは右側にあり、初登場は舞台上手からだった。
何度も観ているお芝居なのに、改めてこの「あざ」にハッとさせられたのが、仮祝言の場面だった。
八百屋に「人違いだった」と告げられ、ショックを受けるも、すでに仮祝言の準備が整い、客人が集まっている。だからせめて仮祝言だけでも挙げさせて欲しい、そのあと離縁するからと、八百屋に頼む五郎兵衛。
この時、八百屋が舞台下手からやって来るので、五郎兵衛は上手に立って話していて(綺麗な方が客席に向いている状態)、途中で、八百屋を上座に座らせ、自分は下座にまわる・・・つまり、あざのある側を客席に向けて頭を下げることに。
ハッとした。
名うてのやくざ一家の看板も"男"のプライドもかなぐり捨て、全てをさらし、堅気の八百屋に頭を下げているのだ…と、受け取れた。
立ち位置1つで、いつまでも思い出す場面になった。